更新日: 2020年12月09日
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元祖チンチロリンハイボールの「大衆鳥酒場 鳥椿」大山店が移転。

人気のネオ大衆酒場として早くから注目を集め、「元祖チンチロリンハイボールの店」としても知られる「大衆鳥酒場 鳥椿」。代表・北野達巳氏の創業店で、約10年の歴史を刻んだ「大山店」が、11月1日、前店舗から200mほどの場所に移転オープンした。多くのファンに愛されてきたメニューはほぼそのまま踏襲しながら、北野氏にとって初の「スケルトン物件」、「スチコン導入」という新しい試みにもチャレンジしている。

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一時は店を閉めることを決断したが、新物件と「奇蹟の出会い」

「大衆鳥酒場 鳥椿」を展開するTKG(東京都板橋区)代表の北野達巳氏は、飲食業の会社に勤務していた2010年9月、「鳥椿」の前身となる「ひよっこ」を、東武東上線・大山駅から程近い場所に立ち上げた。その後、同会社を退職し、2011年5月に自身が「ひよっこ」のオーナーになって独立開業。2011年11月、元は別オーナーが営んでいた焼鳥店を、店名もそのまま引き継いだ「鳥椿 鶯谷朝顔通り店」を出店したのを機に、大山の「ひよっこ」も「鳥椿」へと店名を新たにした。現在、大山店、鶯谷朝顔通り店、雷門一丁目店の直営3店舗、上板橋店、深川森下店、築地店のFC3店舗の計6店舗を展開している。

北野氏にとって大山店は創業店で、それだけ思い入れも強いが、実は当初、移転ではなく、店を閉める予定だったという。元々、大山店は、2フロアを借りて1階だけ使っていることもあって家賃比率が高く、利益率の低い店舗だった。加えて、このコロナ禍で大きな影響を受けたこともあり、オープンから10年の区切りのタイミングで閉店することを決めたのだ。しかし、奇蹟のようなことが起こる。店舗の解約を伝えた同じ日に、移転することになる物件の話が舞い込んだのである。その物件があるのは、「大山で安く飲むならココ」という人気大衆酒場が軒を連ねる通り。好立地であると同時に、「レッドオーシャン立地」でもあったが、「大山で10年やってきたので、今ならここに出店しても埋もれることはない。地元のお客さんとのつながりが強いので、十分にやっていける。他の大衆酒場と共存共栄できる」と考えて北野氏は移転オープンに踏み切った。
東武東上線・大山駅から100m弱の近距離。移転前の店舗からは、東武東上線の反対側に位置する場所で、大衆酒場が軒を連ねる通りにある

「居抜きのデメリット」を減らした出店も試したかった

これまで北野氏が出店した店舗は、丸ごと居抜きで物件取得費込みの出店費用がわずか87万円だったという鶯谷朝顔通り店を始め、すべて低投資の居抜き物件。そうした中、今回移転オープンした大山店は、初めてスケルトンから店を作った。「居抜きは低投資のメリットがある一方で、自分が作りたいように作れないなどのデメリットもある。居抜きのデメリットを減らした形での出店も、そろそろやらないといけないと考えていたところでした。また、今回は解体からのスケルトン物件だったので、『鳥椿』をスケルトンから作ったら、マックスでこれくらいの費用がかかるということも分かりました」(北野氏)。スケルトンの物件でも出店したのは、コロナ禍で特別融資を受けることができたのも理由として大きかったという。「借りたお金を赤字の補填だけに使うのは…との思いがあったので、タイミングよく意味のある投資ができました」と話す。

移転した大山店の内装デザインは、「スケルトンから店をやる時は頼もうと思っていました。独立前からの付き合いで、僕のことをよく分かってくれているので」(北野氏)という横井貴広氏(FOOD ARCHITECT LAB代表)に依頼。その内装は、「使い勝手が良くて、居心地がいい」をモットーとする「鳥椿」の空気感を、奇をてらうことなく表現している。壁にズラリと貼られた深緑色のネームプレートが印象的で、店内奥の壁一面を使った一升瓶ボトルの棚が空間のアクセントになっている。客席は入口を入るとオープンキッチンの10席のカウンター席があり、奥には18席の長テーブルと6人がけの大テーブル(3卓)で構成する36席のテーブル席を用意。テーブル席の客席レイアウトは移転前の店舗とよく似ており、常連客からは「店が新しくなったのに違和感がない」という声が。一方で、「前の店舗はカウンターに2~3人しか座れなかったので、今回は長いカウンターが欲しかった」(北野氏)という念願をかなえる形でカウンター席は大幅に増席した。
入口側にカウンター席、奥にテーブル席を用意。オープンキッチンのど真ん中に、新たに導入したスチコンを置いている

「変えるところがない」と言えるほど完成度の高いメニュー

メニューについては、日替わりなどで新しいメニューを日々考案しているが、ベースとなる基本メニューは移転後も従来の内容をほぼそのまま踏襲。「レバ焼き」(1皿 250円)、「ハツ焼き」(1皿 250円)、「ぼんじり焼き」(1皿 250円)など5種類を揃える「名物鳥焼き」、「鳥皮ポン酢」(350円)、「鳥の一夜干し」(450円)などのおすすめ鶏料理、1個単位で注文できる「名物チューリップ唐揚げ」(1個90円)、厚さが2.5㎝もある「名物ハムカツ」(300円)、テレビ東京の「孤独のグルメ」で紹介されてブレイクした「アボカド鶏メンチ」(500円)…等々、鳥椿ファンにはお馴染みのメニューが揃う。「100円おつまみ」(4品)、「150円おつまみ」(4品)、「200円おつまみ」(3品)、「250円おつまみ」(3品)、「300円おつまみ」(5品)、「350円おつまみ」(7品)、「400円おつまみ」(5品)の50円単位の均一価格メニューも健在だ。

「内容を変えようと思っても、変えるところがないくらい、できあがっている」と北野氏が話すように、開業10年で完成度が高まっているのが「鳥椿」のメニュー。利用客にとっては、「刺身は無いけど全体のバランスが取れていて飽きない。分かりやすくて頼みやすい」(北野氏)のが魅力で、店にとっても「品数が多いように見えて、実は使っている食材は少ない」など、無理なく提供できるラインナップになっているのだ。例えば、「梅きゅうり」(250円)のキュウリは「納豆きゅうり」(350円)にも使い、「納豆きゅうり」の納豆は「納豆おろし」(400円)にも使い、「納豆おろし」の大根は「大根サラダ1号」(450円/マヨネーズベース)、「大根サラダ2号」(450円/和風ドレッシング)にも使うというように、一つの食材で効果的にバリエーションメニューを開発。こうした工夫でロスも減らし、フード・ドリンク全体の原価率を30%弱に抑えている。
「名物鳥焼き」は、「串に刺さない焼鳥」。写真は、「レバ焼き」「ハツ焼き」「砂肝焼き」「ぼんじり焼き」などが一度に楽しめる「盛り合せ」(650円)

スチコンが裏方ではなく、「エース」として大活躍!

2個のサイコロを振って「ゾロ目なら無料」、「合計が偶数なら半額」、「奇数なら倍額で分量も2倍(「鳥椿は2.5倍」)」になる「チンチロリンハイボール」。北野氏が9年ほど前に考案し、その後、瞬く間に居酒屋業界に広まった名物販促だ。「元祖チンチロリンハイボールの店」として、移転した大山店でも「トリスハイボール」(300円)、「ジンジャートリスハイボール」(350円)、「ジムビームハイボール」(350円)、「角ハイボール」(400円)、「冷凍レモンハイボール 角・カンパリ・翠」(各400円)、「キンミヤ焼酎ハイボール」(300円)、「タカラ焼酎ハイボール」(300円)などハイボールメニューを充実。「鳥椿」ではビールよりもハイボールの売上比率が高く、「チンチロリンハイボール」の販促効果は威力を発揮し続けている。加えて移転オープンした大山店では、新たに「カップ酒」(各500円)を導入。「シェアではなく1人1個。そうしたコロナ禍のニーズに合致している」のもカップ酒を導入した理由の一つだ。また、コロナ禍で大山店は、4月から営業開始時間を15時から10時に前倒しした(閉店時間も翌3時から24時に変更)。「昼飲みの獲得は、毎日、昼の営業を継続して認知度を高めることが大事」(北野氏)という言葉通り、移転後も平日、土日を問わず、午前11時からの営業開始で昼飲みニーズに対応している。
11月下旬の取材時に提供を開始した「百合子の6つ目『小』セット」。小鉢3種、「チューリップ唐揚げ1本」、「ハムカツ1切れ」に、1時間飲み放題が付く超お得なセットだ
そして、移転した大山店での北野氏の新たな試みとして特に注目なのが、スチームコンベクションオーブンの導入。4年前くらいに、展示会で居酒屋向けの小型のスチコンを見て、いつかは導入したいと考えていたという。実際、導入した効果は非常に大きかった。例えば、「名物鳥焼き」は「串に刺さない焼鳥」で、鉄網に挟んで焼き台で焼いていたが、これをスチコンに変更。「スチコンは温度と水分量を設定して焼けるので、鳥焼きをよりジューシーに仕上げられるようになりました。誰がやってもブレがなく、提供スピードも抜群」(北野氏)というほど、クオリティーの向上とオペレーションの改良に貢献している。年明けに改装予定の鶯谷朝顔通り店でも、スチコンを導入するという。「スチコンは居酒屋でも裏方として活躍し始めていますが、うちの場合は敢えてオープンキッチンのど真ん中に置きました。裏方ではなく、エースとしてスチコンを活躍させます。スチコンのような機械を使うと、お客さんから『手抜きしているの?』と言われるかもしれませんが、『100%おいしくなっていますよ』と切り返せるので問題ありません。正々堂々とスチコン。そんな大衆酒場のスチコンって、かっこいいでしょ(笑)」と話す北野氏は、創業から10年目を迎え、さらに「この先の10年」を見据えた新たな一歩を踏み出している。

(取材=亀高 斉)
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