更新日:
2023年09月15日
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渋谷『麺KAWAKEI』変わらない鶏唐そばと変わる街
再開発が進み、かつての町並みがなくなりつつある渋谷。大通りはどこもチェーンの飲食店が立ち並んでいるが、裏通りに入れば、昔から愛されている老舗店がまだまだ残っている。今回は渋谷の裏通りを歩き抜け、渋谷駅のガード下から神泉に移った、有名なそば店『麺KAWAKEI』を訪ねてみた。町歩き的そば探訪連載「あの町のあのそば」第3回(2019年10月22日公開)
- 東京ソバット団
- 本橋隆司=美味い立ち食いそばを求めて西へ東へ...
アゲアゲ感がいかにも渋谷らしい『麺KAWAKEI』の「冷やし唐揚そば」

京王井の頭線の神泉駅の近くにある『麺KAWAKEI』の人気メニューが、この「冷やし鶏唐そば」だ。
ぶっかけそばの上に唐揚げが乗っているのだが、この唐揚げが変わっていて、スウィートチリソースで味つけされている。
ぶっかけそばの上に唐揚げが乗っているのだが、この唐揚げが変わっていて、スウィートチリソースで味つけされている。

たっぷり盛られたネギと一緒に唐揚げをかじり、そばをズズッとすする。
甘辛な唐揚げの味わいと、キリッとしたそばの風味が意外と合う。そば好きからは邪道と言われそうな組み合わせだが、これはアリ。
それに、食べているとなんだかテンションが上がってくるのだ。楽しいそばなのである。
甘辛な唐揚げの味わいと、キリッとしたそばの風味が意外と合う。そば好きからは邪道と言われそうな組み合わせだが、これはアリ。
それに、食べているとなんだかテンションが上がってくるのだ。楽しいそばなのである。
昭和35年創業。渋谷の街をガード下から見守り続けた名店がいまは円山町に

さて、店の名前と「冷やし鶏唐そば」というメニューで、ピンと来た人も多いだろう。この『麺KAWAKEI』は、かつて渋谷駅の宮益坂寄りのガード下で長く人気だったそば店だ。
1960年に立ち食い店としてガード下にオープンした『麺KAWAKEI』がなにより画期的だったのが、24時間営業だったこと。
当時の国鉄(現JR)から、放火や犯罪防止のために、できるだけ長く店をやってほしいと頼まれたのがきっかけだった。今と違い、当時は駅周辺の治安もそれほど良くなかったのだ。
当時の国鉄(現JR)から、放火や犯罪防止のために、できるだけ長く店をやってほしいと頼まれたのがきっかけだった。今と違い、当時は駅周辺の治安もそれほど良くなかったのだ。

以来、長く人気店だった『麺KAWAKEI』だが、2015年に駅周辺の再開発に伴う立ち退きで閉店。その2年後の2017年に神泉で再オープンした。
店の入口は道路から奥まっていて、どこか隠れ家っぽい。店のメニューは変わらないのだが、以前の店と違って落ち着いた雰囲気で、神泉という街にすごく馴染んでいる。
店の入口は道路から奥まっていて、どこか隠れ家っぽい。店のメニューは変わらないのだが、以前の店と違って落ち着いた雰囲気で、神泉という街にすごく馴染んでいる。
渋谷ハチ公口から裏道を歩きつつ行ってみようか

さて、『麺KAWAKEI』に行くには、神泉駅から行くのが一番近いのだが、今回はあえて渋谷駅から行ってみよう。そしてさらに道玄坂を上っていくのが分かりやすいのだが、あえて裏道を通ってみる。
それは近道だからではない、こっちのほうが面白いからだ。
それは近道だからではない、こっちのほうが面白いからだ。

まずは渋谷駅から道玄坂を上り、右に曲がって百軒店に入っていく。チェーン店が増え、どんどん味気ない街になっていっている渋谷だが、この百軒店近辺の路地は、まだまだ昔の雰囲気が残っている。
数々の名店も。昭和の歓楽街としての雰囲気を残す「百軒店」

そんな百軒店の名店と言えば、まずは『とりかつ』。こんな路地の、しかも雑居ビルの半地下という不利な立地ながら、その味と安さで百軒店の名物店となっている。

さらに進めば、1952年の老舗中華麺店、『喜楽』がある。この日は定休日だったが、ふだんは昼どきを過ぎても待ち客が出る人気店だ。

そしてその奥にはインドカレーの『ムルギー』が。優しく深い独特なカレーは唯一無二で、これも百軒店の名物になっている。

この百軒店近辺は路地が入り組んでいて迷宮のようなのだが、あえて細い路地に突っ込んでみる。まずは『とりかつ』を素通りしていくと、こんな路地に。
粋な花街「円山町」も、ラブホ街を経ていまや“クラブのある街”に

これを抜けるとホテルの居並ぶ道に出るので、さらに西へ進む。昼のホテル街は歩く人も少なく、すぐそばの道玄坂とは違ってひっそりとしている。

この近辺、円山町はもともと花街。
神泉に公衆浴場ができたことをきっかけに料理旅館と芸姑屋ができ、大正時代のはじめには、料亭、置屋、待合のそろった「三業地」として、おおいににぎわった。
しかし時が過ぎるにつれ次第に寂れ、料亭が旅館に鞍替えしていったことから、一大ホテル街となったのである。
神泉に公衆浴場ができたことをきっかけに料理旅館と芸姑屋ができ、大正時代のはじめには、料亭、置屋、待合のそろった「三業地」として、おおいににぎわった。
しかし時が過ぎるにつれ次第に寂れ、料亭が旅館に鞍替えしていったことから、一大ホテル街となったのである。

しかし、そのホテルもあまり景気が良くないらしく、若い人たちにとっては「クラブのある街」なのかもしれない。実際、ある有名な和風ホテルのあった場所を通ったところ、そこは更地になっていた……。

ただ、料亭は今もいくつか残っており、当時の雰囲気を伝えている。
また、円山芸者も5名いて、円山町の料亭でお座敷遊びを楽しむことができる。この『おでん割烹ひで』も、芸者さんを呼べる老舗の料亭だ。
渋谷とは思えないしっとりとした雰囲気を纏う円山町。新しい『麺KAWAKEI』は、そんな街にある。
また、円山芸者も5名いて、円山町の料亭でお座敷遊びを楽しむことができる。この『おでん割烹ひで』も、芸者さんを呼べる老舗の料亭だ。
渋谷とは思えないしっとりとした雰囲気を纏う円山町。新しい『麺KAWAKEI』は、そんな街にある。
街と店は変われど『麺KAWAKEI』のそばは変わらず美味しい

ただ、ロケーションと店の形態は変わったものの、出されるそばは変わらずだ。やはり以前からの人気メニュー、ネギバカそば」もしっかりとメニューに載っている。

温かいのもあるが、人気は冷やし。これでもかと盛られたネギは、白ネギ、青ネギ、揚げネギの3種類で、切り方も変えられていて、ネギのシャキシャキした食感と香りを存分に楽しめる。ネギとそばをワシっとつかんで、すするというよりワシワシ食べる。ネギはくさみなくしっかり風味があり、しっかり締められたそばとダシのしっかりしたツユとの相性はすこぶるいい。ラー油が合わせられていて、ピリッとした辛みもいいアクセントだ。

そばは変わらずとも、以前とはたたずまいがずいぶんと変わった『麺KAWAKEI』。現在の店に落ち着いた経緯を、店主の川村貴康さんにうかがった。
せわしなかったガード下から、芸者も通う地域密着の落ち着いたそば店に

川村さん「店はまたやろうと考えていて、前の店を閉めてしばらくは知り合いの飲食店を手伝いながら、物件を探していたんですよ。ただ、以前のような駅近くはなかなかないし、あっても家賃がすごく高いんです。そんなときに知り合いから神泉の物件を紹介されて、ここだったら、落ち着いてお酒を飲んでそばを食べられる店にしようと思ったんです」

店の場所が変わったことで、お客さんの層も変化があったという。
川村さん「前は駅近くだし、24時間営業だったこともあって、いろいろなお客さんが来てくれました。明け方はクラブで遊んだ帰りの人たち、朝や昼はサラリーマンが多かったです。今は以前の常連さんたちに加え、近くに住んでいる人たち、働いている人たちもよく来てくれていますね。地域密着っていう感じです。円山の芸者さんも、ランチに食べに来てくれますよ」
川村さん「前は駅近くだし、24時間営業だったこともあって、いろいろなお客さんが来てくれました。明け方はクラブで遊んだ帰りの人たち、朝や昼はサラリーマンが多かったです。今は以前の常連さんたちに加え、近くに住んでいる人たち、働いている人たちもよく来てくれていますね。地域密着っていう感じです。円山の芸者さんも、ランチに食べに来てくれますよ」

店の近くはやはり円山町らしく、どこかのんびりした雰囲気がある。渋谷の近くにも、こんな別世界のようなエリアがあるのだ。
川村さん「前と違って、地域との密着感がありますね。ちょっと買い出しに外に行くと、お客さんとばったり会ったりして。生活感があって、すごくいい街だと思いますよ」
川村さん「前と違って、地域との密着感がありますね。ちょっと買い出しに外に行くと、お客さんとばったり会ったりして。生活感があって、すごくいい街だと思いますよ」

そばを食べて取材を終え、店を出ると円山芸者さんらしき女性とすれ違った。渋谷駅前を離れ、神泉で再スタートをした『麺KAWAKEI』。渋谷は大きく変わりつつあるが、『麺KAWAKEI』にはいつまでもここで、おいしいそばを食べさせてもらいたいものである。
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- 東京ソバット団
- 本橋隆司=美味い立ち食いそばを求めて西へ東へ。バッと行ってバッと食ってバッと帰る東京ソバット団の団長。そば以外にもフリーの編集、ライターとしてウェブなどで仕事中。近著『立ち食いそば大図鑑』(スタンダーズプレス)、FBページ「https://www.facebook.com/tokyosobatdan/」
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