更新日: 2024年05月16日
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銀座『バードランド』の名物、とろふわの親子丼を生み出す21年愛用の鍋/第1回中編

銀座『バードランド』名物、とろふわの卵が軍鶏と絶妙に絡む親子丼を生み出すのは、店主の和田利弘さんが21年間使い続けるこだわりの鍋でした。——道具へのこだわりがおいしさを生む。連載『料理のプロの三種の神器』では、一流の料理人が愛用する3つの道具へのこだわりを語ります。(2019年7月8日公開)

Sainowaki
焼き鳥店として日本で初めてミシュランの星を獲得。
培った技で奥久慈鶏のうまみを最大限引き出し、名店の誉れ高い「銀座バードランド」。
焼き鳥のみならず、レバーパテや親子丼、プリンなど、人気メニューも多数開発。
今なお先頭に立って焼き鳥界を引っ張る和田利弘さんが、「道具」への哲学を語る連載第1回・中編

21年間、親子丼を作り続ける鍋

バードランドの名声を高めた料理のひとつに、名物の「軍鶏親子丼」がある。
ふわふわとろとろの逸品を生み出す親子鍋も、和田さんのこだわりの道具だ。

「この銅の鍋は、もう21年間使っているんですよ。はじめは錫(すず)が塗られていたけど、すっかり取れてしまいました」
21年間の愛用に耐える鍋。銅が鈍い輝きを放つこの道具、相当にこだわって選び抜かれた逸品に違いない。
「いや、実はそんなこともないんですよ(笑)」
バードランドの親子鍋
聞けば21年前、料理評論家の山本益博さんに声をかけてもらって、東京駅の大丸デパートで「大江戸老舗展」という催事に出店したときのこと。
催事場はガスの使用が禁止されていて、昔ながらのニクロム線の電熱器で親子丼を作ることになった。
だがやはりというべきか、店で使っている鍋を持参したけど、熱伝導にムラが出てうまく仕上がらない……。

そこで、同じ催事に出店していた、おろし金の職人が売っていた親子鍋を買って試してみた。
さして期待などしていなかったが、これが意外にもとてもよかった。
和田さんが使っていた鍋より厚く、縁の高さもある。そのため、重みもあって火にかけると安定感があり、鍋全体にムラなく熱が伝わるのだ。
おろし金職人は「店先がさびしくならないように」と、たまたま鍋を置いていただけだったのだが……。

和田さんはその場で販売されていた5つをすべて購入。その後、バードランドが阿佐ヶ谷から銀座に移った15年前に同じものを5つ買い足し、いまも10個体制だ。

「一番長く使っている鍋が、最近修理から戻ってきたんです。リベットを打ち直してもらいました。ネジや持ち手を付け替えるなど、細かなところは自分でメンテナンスをしてきたので、この21年間に修理に出したのは今回がはじめてのことだったんですよ」

ふわっと溶ける食感のため、持ち手の角度にまでこだわる

バードランドの親子丼
追加注文の際に1点だけリクエストしたのは、持ち手の角度を少し寝かせてもらうこと。
蕎麦屋などでは、親子丼やカツ丼を作るときに鍋をコンロにかけたまま料理をするのが一般的。だから、コンロの火で焦げないように、鍋の持ち手はほぼ直角についている。

「うちの親子丼は、持ち手を握り、鍋をふるふると揺らしながら目で確かめて作ります。だから、持ち手が火に当たることはないし、40度くらいに寝ていたほうが鍋の中が見えて、卵への火の入り具合が確認しやすいんです」
ほろほろっと口の中に入ってふわっと溶けていくあの食感は、ひとつずつ、ていねいに目をかけて作られているからこそなのだ。
バードランドの親子丼
現在使っている鍋、21年前まで使っていた鍋、そして、最近、業務用調理器具のカタログに載っていたので買ってみた安価な鍋。どの鍋もピカピカだ。
念入りに磨いているのかと思いきや、
「いやいや、スポンジたわしでササササッと洗うだけですよ」
長年、毎日使いつづけて、こんなにきれいに保てるものなのか。
「そりゃ、調理中に焦げつかせたりしないからね」
そうなのだ、だからこその美しさなのだ。うちの鍋たちと大違い。

前回のうちわといいい、今回の親子鍋といい、選りすぐりの道具を入手しているわけではない。
出会った道具にこまめに手をかけ、「使いながら、大切に育てる」のが和田さんの流儀なのだ。
(後編に続く)

バードランドの和田利弘
和田利弘(わだとしひろ)
1958年、茨城県生まれ。大学在学中からもつ焼き店で働き、1987年に阿佐ヶ谷にて「地鶏焼きバードランド」オープン。2001年、銀座に移転し、現在は銀座と丸の内の2店舗を取り仕切る。焼き鳥の可能性を追求し、斬新で合理的、率直な人柄で同業者やフードジャーナリストにもファンが多い
バードランドの店内
銀座『バードランド』
茨城の奥久慈軍鶏を紀州備長炭で焼き上げる。串焼きやレバーパテも楽しめるコースを中心に、アラカルトも充実。焼き鳥と相性のいい日本酒やワインも豊富に取り揃える。焼き鳥店として日本のはじめてミシュランの星を獲得し、海外のグルメたちにも人気が高い。奥久慈の軍鶏の卵を使った親子丼やプリンも人気

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