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更新日: 2019年09月26日
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知る人ぞ知る「日本の東南アジア」海老名でもレアなラオス料理の店『ビストロ ケオピラ』

厚木や海老名、綾瀬や大和といった神奈川県中部は、知る人ぞ知る「日本の東南アジア」。そのエリアでも珍しいラオス料理専門店『ビストロ ケオピラ』は日本人にも相性のいい、アジアのいいとこ取りの料理がずらり揃って食欲を刺激するのです。——日本の日常に溶け込んだ異国の料理店で働く人々の人生に触れる連載『辺境食堂』第5回です。(2019年9月24日公開)

熊崎敬
サッカーを中心に取材、執筆を続けるスポーツラ...
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「日本の東南アジア」海老名市でもレアな、ラオス料理専門店

厚木や海老名、綾瀬や大和といった神奈川県中部は、知る人ぞ知る「日本の東南アジア」。
東南アジアでは1950年代から70年代にかけてベトナム戦争やラオス内戦が相次ぎ、すっかり荒廃した故郷を捨て、多くの人々が難民となった。
その中で日本に新天地を求めた人々が最初に定住したのが、神奈川県中部だったという。

東南アジアの文化がディープに根づくこの地には、本場のラオス料理が味わえる「辺境食堂」がある。その名は『ビストロ ケオピラ』。
海老名市のラオス料理「ビストロケオピラ」の店舗外観
残暑も厳しい夏の終わり、小田急線と相鉄線を乗り継いでさがみ野駅近くの店を訪れると、店の片隅でラオス人の幼い兄弟が夏休みの宿題に追われていた。
孫である彼らの算数を手助けしながら、手際よく接客をこなすのが店長のブァシさん。
商売と生活が仕切られていないところは、のんきな東南アジアらしい。
海老名市のラオス料理「ビストロケオピラ」のビアラオ
「ビアラオ」500円(税込)
連日の暑さに参っていた私は、景気づけにラオスのビール「ビアラオ」とおつまみを注文。
「どっちもビールに合うわよ」と言って、ブァシさんが出してくれたのが「シーンヘーン」と「ムーナウ」であった。

シンプルで旨みたっぷり、しかも格安のつまみが充実

海老名市のラオス料理「ビストロケオピラ」のシーンヘーン
▲「シーンヘーン」小/500円(税込)
シーンヘーンは天日干しにしたブタの素揚げ。実に素朴なブタの味だ。天日干しで引き出された、肉本来の甘みと塩気に思わずうなる。
海老名市のラオス料理「ビストロケオピラ」のムーナウ
▲「ムーナウ」380円(税込)
続いてムーナウ。ブタの耳の腸詰めだが、これが思いがけない発見となった。
弾力のあるブタの耳とキクラゲが詰まった腸詰めは、コリコリとした歯ごたえ。さらに、ひんやりしたゼリーのような食感がたまらないのだ。

東南アジアといえば、思い浮かぶのはタイやベトナム。ラオスは正直、印象がうすいが、料理はまったく引けを取らない。
地理や歴史を考えれば、それも納得。
この国ではタイやベトナム、中国やミャンマーといったお隣の国々、さらには旧宗主国であるフランスの食文化が絶妙に混ざり合い、独自の食文化が育まれてきたのだ。

戦禍を逃れ、たどり着いた日本で27年働いて叶えた夢

さて、ケオピラを営むブァシさんが日本にやって来たのは、27年前のこと。夫や母とともに、日本に安住の地を求めた。
日本語をまったくできないところから、昼も夜もなく働き続け、一家の暮らしを支えてきた。
海老名市のラオス料理「ビストロケオピラ」の店長ブァシさん
「料理が大好きな私は、一日にいくつもお弁当屋さんを掛け持ちして働いたよ。このあたりは昔から外国人が多くて、バイト先にはブラジルやペルーの人もいた。お友だち同士、故郷の料理を持ち寄って食べるのが、日々の楽しみだったね」

夫婦で懸命に働くうちに、子どもが生まれ、やがて孫を授かった。そして日本暮らしが27年目を迎えた今春、ブァシさんは長年の夢をかなえる。
懐かしい故郷の味を伝えようと、レストランを出店。ファミリーネームの「ケオピラ」を店名にした。
海老名市のラオス料理「ビストロケオピラ」の店内
育ち盛りの孫がじゃれ合う店内は、まるでラオスの食堂をそのまま持ってきたかのようだ。
厨房ではブァシさんの息子やラオス人の仲間が立ち働く。定連にはラオス人に加えて、ベトナムやタイといった“お隣さん”も。このごろは日本人客も増えてきた。

ミントとパクチーが爽やかに食欲を刺激する、ラオスの国民食「ラープ」

海老名市のラオス料理「ビストロケオピラ」のラープ
ラオス料理が初めてという日本人客に、ブァシさんが決まってすすめる料理がある。
ラオスの国民食であり(タイでも食される)、お祝いの席に欠かせない「ラープ」(税込700円)だ。

ラープとは、ひき肉とハーブを和えたサラダのような料理。ひき肉には、チキン、ブタ、アヒルの3種類があり、私は一番人気のアヒルを注文した。
海老名市のラオス料理「ビストロケオピラ」のラープ
▲「ラープ」に「カオニャオ」もち米/300円(税込)を添えるのが一般的な食べ方
人生初めてのラープ、それは夏の疲れが吹き飛ぶようなひと皿だった。
魚醤やレモン、砂糖に加えて、バナナのつぼみのみじん切りが入った甘辛ソースに、東南アジア特有のスパイスが絡み合い、ふんだんに混ぜ込まれたミントやパクチーの香りが鼻腔をくすぐる。アヒル肉ならではの歯ごたえと野菜のシャキシャキもうれしい。

野性味あふれるアヒルのラープ。これを味わうたびに、日本に暮らすラオス人たちは緑豊かな故郷の田園を思い浮かべるのだろう。まだ行ったことがないラオスの地がとても近くなったような、そんな「ケオピラ」でのひとときだった。
熊崎敬
サッカーを中心に取材、執筆を続けるスポーツライター。海外に出かけては草サッカー見物やスタジアム巡りに精を出している。著書に『サッカーことばランド』(ころから)、『カルチョの休日』(内外出版)など。趣味は草野球。 「FC ROJI」https://fcroji.com/

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