更新日: 2024年04月26日
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ディープ中国化が進む大久保の『淘湘記』で、すっぱ辛がクセになる湖南料理を食べてきた

大久保の湖南料理店『淘湘記』は、界隈ですすむ中華料理のディープな多様化の象徴です。湖南料理の特徴「すっぱ辛」で旨いのはもちろんですが、一番の驚きはそのハンパない盛りっぷりの良さでした!……人種の坩堝にして食文化のカオス、美食と猥雑が入り乱れる新大久保でしか味わえないディープグルメを探します。(2020年1月30日公開)

ナマステ菊池
岩手県出身の38歳。実話誌の編集者として芸能...

大久保駅前!本格的湖南料理の店『淘湘記(とうしょうき)』

大久保の湖南料理専門店『淘湘記(とうしょうき)』の看板
〝ディープ中国〟がここ最近の中華料理のトレンドになっていることは、前回『蘇園餛飩』の記事で紹介したとおり。そして、そのディープさはどんどん深まり、大久保界隈にはニッチな料理店が続々登場している。
国土が広大な中国では地方ごとに料理法や味付けが全く異なり、その区分として有名なのが、山東、江蘇、浙江、安徽、福建、広東、湖南、四料の各地域からなる「中華八大料理」である。
今回お伝えするのは、その中のひとつ「湖南料理」のお店『淘湘記』。その名の通り、湖南省で食される料理が中心だ。

日本人にはまだまだ馴染みの薄い地域だが、長江の中下流に位置する温暖で肥沃な土地は中国国内でも屈指の米どころとして知られている。
6800万もの人々が住む湖南地方の料理の特徴は「辛い」こと。四川料理・貴州料理と並ぶ「中国三大辛い料理」とも呼ばれている。
その辛さにも違いがあり、四川が「麻辣(マーラー)」と呼ばれる花椒を多用した痺れる辛さなのに対し、湖南は「酢辣(サンラー)」という酸っぱ辛い味つけが好まれる。また、舌がヒリヒリとする中国料理で一番辛いとされる強烈な辛みは、「鮮辣(シェンラー)」と形容される。
大久保の湖南料理専門店『淘湘記(とうしょうき)』の入口
辛さを想像するとヒヤヒヤする湖南料理だが、その専門店『淘湘記(とうしょうき)』はJR大久保駅近くにある。
外看板には名物料理の写真の数々がドーンと並び、インパクト十分。
描かれている漢字は「鮮」「辣」「濃」「香」。ストレートに受け取ると、鮮烈で香り高い料理は辛くて味が濃い、ということなのだろう。
大久保の湖南料理専門店『淘湘記(とうしょうき)』の階段
これは行ってみるしかないではないか。階段を降りて地下1階にあるお店の扉を開けると……。
大久保の湖南料理専門店『淘湘記(とうしょうき)』の店内
なんということでしょう、ここは表参道かというくらい小洒落たカフェっぽい内装。
大久保の湖南料理専門店『淘湘記(とうしょうき)』のメニュー
厨房に一番近い席に座り、メニューを見るとなかなか多彩なラインナップ。
しばし考え、店員さんにオススメを聞いてみることにした。

「すいません、湖南料理っぽい酸っぱ辛い料理でオススメありますか?」
「アー、おいしいですよ」
「……どれが美味しいでしょうか?」
「アー、これもあれも、おいしいですよ」

店員に心配される「魚の旨辛煮」の辛さ。テーブルに運ばれてきたものは…?

どうも若いお嬢さんは日本語がまだカタコトのようだ。それでは、とメニューの中から、気になった「魚の旨辛煮」(1,980円・税抜)を指差して、聞いてみた。
大久保の湖南料理専門店『淘湘記(とうしょうき)』の魚の旨辛煮
「これ辛いですか?」
「OK、OK。辛選べます。いっぱい辛い? ふつう?」

なるほど、日本人の口にも合うよう調整してもらえるようだ。しかし、今回は現地の味を確かめてみたい。「辛口でお願いします」とオーダーした。
すると「ほんと、大丈夫ですか?」と確認される。“責任はもてませんよ”という感じの表情を浮かべて。
これはよっぽどの……一瞬躊躇したが、マイルドなものを頼んでもしょうがない。初志貫徹で「辛口」を注文。汁物には米が必要だということで、名前からして食欲をそそる「肉汁茶漬け」(1,280円・税抜)もあわせて注文。

店内を見渡すと客は全員中国の方で、若いカップルさんなどもチラホラ。綺麗で利用しやすいお店なのだろう。
隣の卓では大学生らしき若者3人が、ひとつの大皿に盛られた真っ赤な煮物を箸でつついでいる。美味そうじゃないか湖南料理……などとぼんやり思っているとあっとういう間に料理が運ばれてきた。
大久保の湖南料理専門店『淘湘記(とうしょうき)』の魚の旨辛煮
▲「魚の旨辛煮」1,980円(税抜)
で、でかい……。辛さ以前の問題として、一皿が超巨大なのである。男2人でもやっと食べきれるサイズで、これは力士かラガーマンでピッタリの量。黄土色のスープのうえに浮かんだ真っ赤な唐辛子と白身魚のコントラストが鮮やかだ。
小皿に持って、おそるおそる汁をすすってみると……。
大久保の湖南料理専門店『淘湘記(とうしょうき)』の魚の旨辛煮
あれっ? 思ったよりも辛くない。ちょっと酸味の効いたスープに淡白な白身魚がよく合って、これは美味い。
大久保の湖南料理専門店『淘湘記(とうしょうき)』の店内
調子にのって2口、3口と食べ進めていると、急にきた。喉にきた。ピリピリとした刺激が先にあり、その後ガーっと熱さが押し寄せてくる。こ、これが「鮮辣」か!

どっと汗が噴き出すなか、辛さのなかに次第にスープのコクと出汁の旨味を感じるようになる。たしかに酸味が効いた味覚には少しクセがあるものの、日本人の口にもよく合う。湖南地方は毛沢東の出身地としても知られ、こういった辛くクセのある料理は毛主席のお気に入りであったという。

ソソるネーミングの「肉汁茶漬け」。出てきたのはどうみてもチャーハン!

続いてやってきた「肉汁茶漬け」。
大久保の湖南料理専門店『淘湘記(とうしょうき)』の肉汁茶漬け
▲「肉汁茶漬け」1,280円(税抜)
へっ? これが茶漬け? 中華鍋に持ち手が付いたような見た事のない器に、これまた大量の米が盛られている。その見た目はどう見てもチャーハン。

もう一度メニューをよく見ると、中国語では「肉湯拌飯」と表記されている。
大久保の湖南料理専門店『淘湘記(とうしょうき)』のメニュー
調べてみると、拌飯(バンハン)とは中華風混ぜご飯のことらしい。つまり、肉汁たっぷりの肉を使った炒め混ぜご飯といったところか。日本語に変換した際に間違えて茶漬けにしてしまったのかもしれない。想像であるが……。
大久保の湖南料理専門店『淘湘記(とうしょうき)』の肉汁茶漬け
茶色い米にネギとパプリカがまぶされて、見た目にも鮮やか。さっそく食してみると、こいつはまったく辛くない。むしろ甘じょっぱい風味がやみつきになりそうで、バクバクいける。細切れの肉はおそらく豚だろうが、ちょうどいい歯ごたえでよく米にあう。

辛ーい魚の旨煮と、やみつき系の混ぜご飯が奇跡のベストマッチとなり、おそらく成人男性6人くらいでちょうどいい量を2人で完食することができた。
今回は腹パンで調査できなかったが、同店にはさらに辛い料理や臭いクセ強めなメニューもあるようだ。胃袋に自信のない方はランチであれば1人分の量で食べることができる。
 
まだまだ珍しい辛くて酸っぱい湖南料理。ぜひ試してみる価値はあるだろう!
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ディープ中国化が進む大久保の『淘湘記』で、すっぱ辛がクセになる湖南料理を食べてきた

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ナマステ菊池
岩手県出身の38歳。実話誌の編集者として芸能スキャンダルから裏風俗まで幅広く取材を続けている。職業柄、歌舞伎町~大久保界隈の事情に詳しく、週の半分は大久保に訪れている。元妻はネパール人。

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