更新日:
2020年11月28日
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鶴見『ユリショップ』の現地そのままの肉料理とフェイジョンで100%ブラジル気分に浸る
横浜市鶴見区の仲通地区は沖縄とブラジルの文化が混在する陽気な街。ここで店を構える『ユリショップ』はステーキにフェイジョン、バーガーにパステウが旨い、100%ブラジル気分のブラジル食堂です。——日本の日常に溶け込んだ異国の料理店で働く人々の人生に触れる連載『辺境食堂』第6回です。(2019年10月9日公開)
- 熊崎敬
- サッカーを中心に取材、執筆を続けるスポーツラ...
鶴見なのに100%ブラジル気分に浸れる『ユリショップ』
サッカー観戦をしながら世界中を旅してきた私は、よくこんな質問を受ける。
「いままで旅した国で、いちばん好きなのは?」
正直悩むところだが、最近はブラジルと答えることが多い。
上手く説明できないが、あの国にはすぐにだれとでも仲良くなって、楽しくなってしまう愉快な空気が流れているのだ。
「ああ、またブラジルに行きたいなあ」
旅の虫に駆り立てられるようにして、私は出かけた。といってもブラジルに、ではない。向かったのは川崎市鶴見区。この街には、100%ブラジル気分が味わえる“辺境食堂”があるのだ。
JR鶴見駅から徒歩で約15分。仲通商店街にたたずむ、その店の名は『ユリショップ』という。
「いままで旅した国で、いちばん好きなのは?」
正直悩むところだが、最近はブラジルと答えることが多い。
上手く説明できないが、あの国にはすぐにだれとでも仲良くなって、楽しくなってしまう愉快な空気が流れているのだ。
「ああ、またブラジルに行きたいなあ」
旅の虫に駆り立てられるようにして、私は出かけた。といってもブラジルに、ではない。向かったのは川崎市鶴見区。この街には、100%ブラジル気分が味わえる“辺境食堂”があるのだ。
JR鶴見駅から徒歩で約15分。仲通商店街にたたずむ、その店の名は『ユリショップ』という。

食堂なのにショップを名乗るのは、店舗の半分でブラジルからの輸入食品と雑貨を売っているから。肉や豆、菓子や飲み物といった食品がメインだが、ブラジルらしく人気チームのエンブレム入りサッカーボールも並んでいる。

ブラジル料理の基本、ワンプレートの定食が現地ムード満点
日本では珍しい品々を見ているだけでテンションが上がるが、腹ペコの私は奥の食堂コーナーに突き進み、迷わずお目当てのメニューを注文した。
「牛ステーキとタマネギのプレート、お願いします!」
やがて大きなプレートがどどん! と登場。
白米にグリーンサラダ、ポテトフライ、そして主役のステーキの上には炒めたタマネギがどっさり盛られている。
「牛ステーキとタマネギのプレート、お願いします!」
やがて大きなプレートがどどん! と登場。
白米にグリーンサラダ、ポテトフライ、そして主役のステーキの上には炒めたタマネギがどっさり盛られている。

私は興奮した。というのも、「ワンプレートにてんこ盛り」がブラジル料理の基本だからだ。彼の国の人々は、これを混ぜながら食べる。
このスタイルは、よくブラジルという国の形にもなぞらえられる。イタリアにルーツを持つサンパウロの友人が、こう言っていた。
「ブラジルは日本人も含めて、ありとあらゆる人種が混ざり合ってできた国。ぼくらはそれを、食事でも表現しているんだ。ほら、混ぜれば混ぜるほどおいしくなるよね? 人間だって同じだよ」
このブラジル流「混ぜ混ぜスタイル」に欠かせないのが「フェイジョン」。インゲン豆をメインとした豆のスープだ。安価で栄養価が高く、ブラジルの国民食となっている。もちろんユリショップの定食メニューにも、もれなくついてくる。
このスタイルは、よくブラジルという国の形にもなぞらえられる。イタリアにルーツを持つサンパウロの友人が、こう言っていた。
「ブラジルは日本人も含めて、ありとあらゆる人種が混ざり合ってできた国。ぼくらはそれを、食事でも表現しているんだ。ほら、混ぜれば混ぜるほどおいしくなるよね? 人間だって同じだよ」
このブラジル流「混ぜ混ぜスタイル」に欠かせないのが「フェイジョン」。インゲン豆をメインとした豆のスープだ。安価で栄養価が高く、ブラジルの国民食となっている。もちろんユリショップの定食メニューにも、もれなくついてくる。

▲「牛ステーキの玉ねぎ和え」1,200円(税込)
赤茶色のフェイジョンを白米にかけまわし、肉や野菜を一緒にかきこむ。
そうそう、これこれ。絶妙な塩気と白米の香ばしい香りに、スプーンが止まらなくなる。赤身肉の濃厚な味わいと歯ごたえもいい。
そうそう、これこれ。絶妙な塩気と白米の香ばしい香りに、スプーンが止まらなくなる。赤身肉の濃厚な味わいと歯ごたえもいい。

醤油味の玉ねぎに透けて見える移民の歴史
多種多様な食材がひとつの皿で絶妙なハーモニーを奏でる、『ユリショップ』のプレート。そこにはフェイジョンと並んで、いい味を出している食材がいた。

飴色に炒められたタマネギだ。
甘さと塩気が絶妙に絡み合い、肉と食べても、米と食べても相手の良さを十二分に引き出している。
「このタマネギ、いいですねえ」
思わずうなった私に、店主のユリさんは嬉しそうに教えてくれた。
「それはね、醤油とニンニクで炒めたウチならではの味なのよ」
醤油味のタマネギ。それはユリさんとその一家の歴史を物語る味だった。その名の通り、ユリさんはサンパウロ生まれの日系2世。醤油で炒めたタマネギは、幼いころから慣れ親しんだ祖国の味なのだ。
甘さと塩気が絶妙に絡み合い、肉と食べても、米と食べても相手の良さを十二分に引き出している。
「このタマネギ、いいですねえ」
思わずうなった私に、店主のユリさんは嬉しそうに教えてくれた。
「それはね、醤油とニンニクで炒めたウチならではの味なのよ」
醤油味のタマネギ。それはユリさんとその一家の歴史を物語る味だった。その名の通り、ユリさんはサンパウロ生まれの日系2世。醤油で炒めたタマネギは、幼いころから慣れ親しんだ祖国の味なのだ。

▲左がユリさん、右はユリさんの息子で店を手伝うエリキさん
沖縄に暮らしていたユリさんの祖父母がブラジルに渡ったのは、1935年のこと。祖父母に連れられ、生後4カ月でブラジルに渡った彼女の父は、農場、トラック、タクシーと職を変えながら懸命に働き、ブラジルで設けたユリさんたち4人の子を立派に育て上げた。
やがて一家は、ブラジルの国民的スナック「パステウ」の屋台で生計を立てるようになる。このパステウは、もちろんユリショップでも売られていて大人気となっている。
やがて一家は、ブラジルの国民的スナック「パステウ」の屋台で生計を立てるようになる。このパステウは、もちろんユリショップでも売られていて大人気となっている。

▲「カルネ(挽肉)のパステウ」300円(税込)
そして89年、サンパウロに生まれ育ったユリさんは日本の土を踏む。多くの日系人と同じように、バブル景気に沸く日本でひと旗上げようと、この国で働き始めたのだ。
彼女は群馬や静岡の工場で働いて生活基盤を固め、やがてサンパウロから両親を呼び寄せた。そして5年前、この地に店を出す。
彼女は群馬や静岡の工場で働いて生活基盤を固め、やがてサンパウロから両親を呼び寄せた。そして5年前、この地に店を出す。
地震よりも怖いのは強盗

もっとも、日本での暮らしは順風満帆ではなかった。
最大の試練は2011年春。そう、東日本大震災だ。
ブラジルからやって来た日系人の多くが、震災に心が折れてブラジルに帰っていった。無理もない。日本人とは違って、彼らは地震に慣れていないからだ。たびたび襲い掛かる震度4や5に、平気でいられるわけがない。
ポルトガル語で語り合える仲間たちが次々と帰っていく中、ユリさんは日本に踏みとどまった。なぜか。
ユリさんがあっけらかんとした口調で教えてくれた。
「地震はとても怖いよ。でも日本は仕事があって治安もいい。ブラジルに帰ったらどうなる? 地震はないけど、仕事も少ないよ。それにあっちは、強盗がしょっちゅう出るんだから」
そう、ユリさんは地震と強盗を天秤にかけて、日本で生きていくことを決めたのだ。
ユリショップがある鶴見区仲通商店街の一帯には、沖縄や南米にルーツを持つ人々が数多く暮らしている。ユリさんの一家のように、沖縄から南米を経由して、この街に根を下ろした人々も少なくない。
この街では毎年9月、沖縄の伝統文化を継承する「鶴見うちなー祭」が盛大に行なわれる。
泡盛やビールでいい気分になった人々がえエイサーを踊る傍ら、ブラジルやペルーの日系人がにぎやかにサンバのリズムで踊り出し、自然と両者が混ざり合っていく。
そう、すべてが混ざり合っておいしくなる『ユリショップ』のプレートは、多様性の街・鶴見を体現しているのだ。
最大の試練は2011年春。そう、東日本大震災だ。
ブラジルからやって来た日系人の多くが、震災に心が折れてブラジルに帰っていった。無理もない。日本人とは違って、彼らは地震に慣れていないからだ。たびたび襲い掛かる震度4や5に、平気でいられるわけがない。
ポルトガル語で語り合える仲間たちが次々と帰っていく中、ユリさんは日本に踏みとどまった。なぜか。
ユリさんがあっけらかんとした口調で教えてくれた。
「地震はとても怖いよ。でも日本は仕事があって治安もいい。ブラジルに帰ったらどうなる? 地震はないけど、仕事も少ないよ。それにあっちは、強盗がしょっちゅう出るんだから」
そう、ユリさんは地震と強盗を天秤にかけて、日本で生きていくことを決めたのだ。
ユリショップがある鶴見区仲通商店街の一帯には、沖縄や南米にルーツを持つ人々が数多く暮らしている。ユリさんの一家のように、沖縄から南米を経由して、この街に根を下ろした人々も少なくない。
この街では毎年9月、沖縄の伝統文化を継承する「鶴見うちなー祭」が盛大に行なわれる。
泡盛やビールでいい気分になった人々がえエイサーを踊る傍ら、ブラジルやペルーの日系人がにぎやかにサンバのリズムで踊り出し、自然と両者が混ざり合っていく。
そう、すべてが混ざり合っておいしくなる『ユリショップ』のプレートは、多様性の街・鶴見を体現しているのだ。
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- 熊崎敬
- サッカーを中心に取材、執筆を続けるスポーツライター。海外に出かけては草サッカー見物やスタジアム巡りに精を出している。著書に『サッカーことばランド』(ころから)、『カルチョの休日』(内外出版)など。趣味は草野球。 「FC ROJI」https://fcroji.com/
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