更新日:
2023年01月05日
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予約の取れない南方中華、荒木町『南三』の豊潤な旨みを引き出すシンプルな「肉吊り」
荒木町『南方中華料理 南三』は中国辺境に着想を得た独創的な料理で、オープン1年にして予約の取れない名店に成長。オーナーシェフ水岡孝和さんが3番目に挙げたこだわりの道具は、豊潤な旨みを引き出す「肉吊り」です。——一流の料理人が自ら愛用する3つの道具へのこだわりを語り、料理への哲学を詳らかにする連載『料理のプロの三種の神器』です。(全3話・後編/2019年10月16日公開)
- Sainowaki
2018年5月のオープンから1年にして予約が取れない店に成長。「枠にはまらない中華料理」と評判の店『南方中華料理 南三』。店主の水岡孝和さんは、中国各地を旅してマニアックな食材や郷土料理に出会い、それらを自分のフィルターにかけて追求、唯一無二の中華料理に昇華させた。ストイックな料理人・水岡さんの料理と、日頃から愛用する道具について伺った。(全3話・後編)
湖南の豆豉で肉の旨みがさらに引き立つ「干し豚バラ肉の炒めもの」
四谷・荒木町『南三』の水岡孝和さんが出してくれた3皿めは、干した豚バラと中華ベーコンときくらげをさっと炒めたものに中国の青菜・カイランを添えて。

豚バラと中華ベーコンを食べると、口に残る味の余韻にうっとり。脂の旨味が腹のそこまで染みわたるのを体感できる。豚バラと中華ベーコンを重ねて食べたり、きくらげを豚バラでサンドして食べたり、いろんな組み合わせの味を楽しめる。
カイランはチャイニーズケールとも呼ばれるもので、菜の花のような、茎がゴリッとしている。わずかな苦味が脂の乗った肉の味をさっぱりとさせ、また豚バラを食べたくさせる。コリコリとしたきくらげがアクセントとなり、バランスのいいひと皿だ。
カイランはチャイニーズケールとも呼ばれるもので、菜の花のような、茎がゴリッとしている。わずかな苦味が脂の乗った肉の味をさっぱりとさせ、また豚バラを食べたくさせる。コリコリとしたきくらげがアクセントとなり、バランスのいいひと皿だ。

「きくらげは夏に行った中国の貴州省で買ってきました。中に豆豉も入っていますが、これは湖南省の豆豉です。『中国の豆豉』とひと言で言っても地方によってまったく別のものになるんです。そんなところも中国の奥深さというか、おもしろいところだと思います」
豆豉? 気づかなかった。しかし、豆豉といえば、もっと小粒で黒っぽいはず……。
「そうですね、日本では、黒くて硬くて小粒で塩気が強いものが豆豉として売られていますよね。それは中国北部の豆豉に近いもので、味も香りも鮮烈。調味料です。しかし、湖南の豆豉は、粒も大きくて、乾燥していますが納豆のよう。食材として使われているんですよ」
なるほど。この蒸し物を白いごはんにかけて食べたらどんなにおいしいだろう、そう思ったけれど、それは豆豉のいたずらなのだ。
「湖南は稲作地帯で米もよく食べますからね。現地でも、よく炒め物に入れるんです。旨味の補強という感じですね」
湖南の豆豉、肉の味わいをより力強くする立役者と覚えておこう。
豆豉? 気づかなかった。しかし、豆豉といえば、もっと小粒で黒っぽいはず……。
「そうですね、日本では、黒くて硬くて小粒で塩気が強いものが豆豉として売られていますよね。それは中国北部の豆豉に近いもので、味も香りも鮮烈。調味料です。しかし、湖南の豆豉は、粒も大きくて、乾燥していますが納豆のよう。食材として使われているんですよ」
なるほど。この蒸し物を白いごはんにかけて食べたらどんなにおいしいだろう、そう思ったけれど、それは豆豉のいたずらなのだ。
「湖南は稲作地帯で米もよく食べますからね。現地でも、よく炒め物に入れるんです。旨味の補強という感じですね」
湖南の豆豉、肉の味わいをより力強くする立役者と覚えておこう。
シンプルすぎる調理道具がもたらす豊潤な旨み
この取材を申し込んだとき、水岡さんは快諾してくれて「では、当日までに紹介したい道具を選んでおきますね」とのことだった。そして、当日、準備してくれていたのは、ミンサーと燻製器。そして……S字フック! なんという不意打ち。
たしかに、お店に入ったときに、一番に目につくのは、厨房に「肉のれん」のように、フックに吊るされた燻製や干し肉だった。
たしかに、お店に入ったときに、一番に目につくのは、厨房に「肉のれん」のように、フックに吊るされた燻製や干し肉だった。

このS字フック、中華料理の世界では「肉吊り」「肉吊るし」などと呼ばれるそうだ。100円ショップなどでも売られているような、一見どこにでもあるステンレス製のフックS字に見えるのだが……。しかし、肉を刺すだけあって、尖端はシュッと鋭く尖っている。

「特別のものではない普通の、よくあるフックです。でも、長年使っているうちに、ちょっとずつ刺す部分が広がって、角度が違ってきたりもします」
そう言われてみると、新品にはない風合いがあり、お店の景色にもよく馴染んでいるようにも感じる。
そう言われてみると、新品にはない風合いがあり、お店の景色にもよく馴染んでいるようにも感じる。

真ん中に輪があって、そこから刺すフックが2~4本出ているのは、北京ダック用のフック。専用のものがあるとは知らなかった。他には、T字型の焼豚用のフックもあるそうだ。
「これは、いつだったか中国で買いました。中国製だし安かったです。しっかりして丈夫だし、壊れる気配もない。使っていてなんのストレスもないですね」
「これは、いつだったか中国で買いました。中国製だし安かったです。しっかりして丈夫だし、壊れる気配もない。使っていてなんのストレスもないですね」
こだわりをカタチにして、お客さまに喜んでもらいたい

水岡さんが料理を志すようになったのは、中学3年生のときに大人気だったテレビ番組『料理の鉄人』がきっかけ。
「中学1年生の頃から料理をするようになり、お弁当も自分で作っていました。母親が作るより、自分が作ったほうがおいしくできるな、って思っていましたね。『料理の鉄人』に出演されていた陳健一さんの麻婆豆腐をどうやったら再現できるのか考えて、上野のアメ横まで調味料を買いに行ったりしてました」
好きなことにはとことん向き合う、完全に納得するまで研究する熱心さは、当時から。そして、そのまま独創的な料理人になった。
「これからもこのこだわりをカタチにして、お客さまに喜んでもらえるようにしたいです。そうでないと、ただの自己満足で終わってしまいますからね」
(全3話・了)
「中学1年生の頃から料理をするようになり、お弁当も自分で作っていました。母親が作るより、自分が作ったほうがおいしくできるな、って思っていましたね。『料理の鉄人』に出演されていた陳健一さんの麻婆豆腐をどうやったら再現できるのか考えて、上野のアメ横まで調味料を買いに行ったりしてました」
好きなことにはとことん向き合う、完全に納得するまで研究する熱心さは、当時から。そして、そのまま独創的な料理人になった。
「これからもこのこだわりをカタチにして、お客さまに喜んでもらえるようにしたいです。そうでないと、ただの自己満足で終わってしまいますからね」
(全3話・了)

水岡孝和(みずおかたかかず)
渋谷の「天厨菜館」から料理人としてのキャリアをスタート。その後、「A-Jun」 「桃の木」「黒猫夜」と都内の中華の名店を経て、台湾へ語学留学。20歳前半から中国各地を旅するようになり、現地で食した郷土食からヒントを得て新しい中華料理を確立。2018年5月に『南三』をオープンさせる。現在も年に2~3度は渡中し、研究に余念がない。
渋谷の「天厨菜館」から料理人としてのキャリアをスタート。その後、「A-Jun」 「桃の木」「黒猫夜」と都内の中華の名店を経て、台湾へ語学留学。20歳前半から中国各地を旅するようになり、現地で食した郷土食からヒントを得て新しい中華料理を確立。2018年5月に『南三』をオープンさせる。現在も年に2~3度は渡中し、研究に余念がない。

四谷・荒木町『南三』
中国の中でも雲南、湖南、そして台湾は台南の料理をベースした料理店。中華といえば、餃子やエビチリという概念を覆し、山海の素材を活かすパーブやスパイスを利かせた中華料理が味わえる。2018年5月にオープン。その直後から「こんな中華はじめて!」とグルメたちをざわつかせ、たちまち予約困難な人気店となる。料理は「おまかせコース」6,000円(税抜)のみ。予約情報はFBにて。
中国の中でも雲南、湖南、そして台湾は台南の料理をベースした料理店。中華といえば、餃子やエビチリという概念を覆し、山海の素材を活かすパーブやスパイスを利かせた中華料理が味わえる。2018年5月にオープン。その直後から「こんな中華はじめて!」とグルメたちをざわつかせ、たちまち予約困難な人気店となる。料理は「おまかせコース」6,000円(税抜)のみ。予約情報はFBにて。

(写真=松園多聞 Matsuzono Tamon)
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