更新日:
2021年05月21日
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三ノ輪『長寿庵』の絶品ツユのそばと安くてうまいものだらけな商店街
かつて賑わいを見せていた、三ノ輪の「ジョイフル三ノ輪商店街」。今ではほかの商店街と同じようにシャッターが目立ち、歩く人もまばらになってしまった。しかし、そんなところでも、うまいものというのはしっかりと今でも残っている。古き良き立ち食いそば店『長寿庵』に足を運び、安くてうまいが普通の街、三ノ輪を歩いてみた。(2019年12月17日公開)
- 東京ソバット団
- 本橋隆司=美味い立ち食いそばを求めて西へ東へ...
350円で味わえる。普通がうまい『長寿庵』の「天ぷらそば」

かえしのきいた濃いツユとゆで麺、そして衣が多めのかき揚げ。今ではあまり見かけなくなった、古き良き立ち食いそばが食べられるのが、三ノ輪にある『長寿庵』だ。

東浅草にある小幡製麺のゆで麺は、しっかりした味わい。色は濃いめながらしょっぱさはなく、どっしりしたうまみを持つツユによく合う。

天ぷらは軽い感じに揚げられていて、ツユを吸うとモチモチ食感に変わる。ボディのしっかりあるツユを吸うと、これがたまらなくうまいのだ。小エビの香りと玉ねぎの甘みもベストバランスだ。この天ぷらそばが350円で食べられるのだから、ありがたい。
何気なく食べている薬味のネギひとつにも細かい気配り

一見、なんてことのないそばなのだが、実はすごくレベルが高い。
薬味のネギも、まないたを使わずに切るというこだわりようで、くさみなくフレッシュ。そばのうまさを見事に引き立てている。
薬味のネギも、まないたを使わずに切るというこだわりようで、くさみなくフレッシュ。そばのうまさを見事に引き立てている。
濃いめのツユは日本の成長期を支えた下町の味

2代目の店主、下田さんによると、この味は先代の頃から変えていないという。下田さんはもともと社会人アメフトのプレイヤー。30年ほど前、ひざを怪我して辞めざるをえなかったときに、先代の笠原さんが病気で店を続けられなくなり、知り合いの縁から店を継ぐことになったのだ。

下町の立ち食いそばというのは、ツユが濃いものが多いのだが、もともとはお客さんに合わせてのこと。下町には職人や肉体労働者など、汗をかく仕事をしている人が多い(エリアにもよりますが)。すると味の濃いものが好まれるようになり、それに合わせてツユも濃くなったのだ。
玉ねぎたっぷり。『長寿庵』はカレーライスもうまいのだ

そんな町ではボリュームも大事。このカレーライスは小で320円。小といっても、しっかり0.8人前はある。トロッとしたルーには玉ねぎがたっぷり入っていて、辛みの中にじんわりした甘みがある。懐かしくはあるが、好きな人にはたまらない味だ。

かけそば(280円)との小カレーセットは560円と、ずいぶんお値打ちだ。だが今回はあえて、きつねそば(340円)を別注文で頼んでみた。
「きつねそば」は2枚の揚げで『長寿庵』を存分に味わう

きつねはツユとの相性を楽しむのがいいのだ。『長寿庵』のきつねは、あっさり味で炊かれていて、揚げのうまさを楽しめるタイプ。1枚目はきつねそのものを楽しみ、2枚目は濃いめのツユをじゅんわり含ませてかぶりつく。思わずうれしくなるうまさだ。
ザ・下町。「ジョイフル三ノ輪商店街」を歩いてみよう

下町の代表のような『長寿庵』のそばだが、すぐそばにあるジョイフル三ノ輪商店街も、「ザ・下町」といった雰囲気に満ち満ちている。

好きな人にはたまらないだろう、ざわついた雰囲気。歩きながら横を向けば、生活臭がプンプンする細い路地があり、こちらの下町感もすごい。
庶民の町の破格すぎる惣菜や弁当についつい目を奪われる
三ノ輪は住所的には南千住。日光街道沿いにあり、江戸時代には千住宿としてにぎわった。近代に入ると隅田川沿いに工場ができ、工場労働者が多く住んだ。いわゆる庶民の町である。

働く人が多く住む町の商店街となると、必ずあるのが惣菜店だ。ごはんを作る時間が貴重な共働き家庭の味方。ここ三ノ輪でも『トクトク弁当ニハマル』が、弁当や総菜を破格の値段で売っていて、買い物客でにぎわっていた。

しかし日本中のどこの町でもそうであるように、ここも高齢化が進んでいて、歩いているのは高齢者ばかりだ。当然、店の経営者も高齢化が進んでいるわけで、シャッターが閉まったままの店もかなりある。
紅しょうが天やおでんに煮込み。下町の誘惑についつい足が止まる

それでも、明るく元気に商売をしている店はある。商店街の中ほどにある、創業80年の『オオムラパン』。食パンを買って帰ったのだけれど、シンプルで素朴な味わいでとても良かった。いろんなものが混ぜられたパンばかり食べている舌には新鮮で、あぁ、パンってこういう味だったよな、とあらためて思う。

さらに『きく』は、天ぷらをズラリと並べて売っている。紅しょうが天をかじりながら、商店街をそぞろ歩くのもいい。

そしてここジョイフル三ノ輪でなによりおすすめしたいのが、アーケードの終点。商店街から外れた路地にある『田川商店』だ。


店前でおでん(50円~)と牛モツ煮込み(一杯340円)を売っているのだが、この牛もつ煮込みが素晴らしい。あっさりめの味つけで煮込まれたもつは、柔らかくてくさみいっさいなく、牛のうまみ甘みがたっぷり。家に持ち帰って食べたのだが、ビールがすすみすぎて、困るほどだった。こんなすごいものが、こんなとこで売っているなんて、三ノ輪すごい!

おでんもダシツユがよくしみている。色ほど味が濃くないツユはダシのうまみよく、日本酒が飲みたくなる。
『田川商店』はもともとみそを売っていたのだが、業種替えして今の形に。おでんと煮込みは店頭で立ち食いもできる。以前は荒川一中の生徒が、学校帰りによく食べていたらしいのだが、先生たちに禁止されてしまったとか。安いしおいしいし、コンビニに寄り道するより、こっちのほうがいいと思いますけどね。
『田川商店』はもともとみそを売っていたのだが、業種替えして今の形に。おでんと煮込みは店頭で立ち食いもできる。以前は荒川一中の生徒が、学校帰りによく食べていたらしいのだが、先生たちに禁止されてしまったとか。安いしおいしいし、コンビニに寄り道するより、こっちのほうがいいと思いますけどね。
立ち食いそば『長寿庵』と「ジョイフル三ノ輪商店街」だけで三ノ輪に出かける理由は充分だ

さくらトラム(都電荒川線)も駅前を整備して、観光客を呼び込もうと頑張っているようだ。三ノ輪には今も昔ながらの安くてうまいものが、しっかり残っている。天気のいい日に、ブラっと散歩でもしていませんか。

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- 東京ソバット団
- 本橋隆司=美味い立ち食いそばを求めて西へ東へ。バッと行ってバッと食ってバッと帰る東京ソバット団の団長。そば以外にもフリーの編集、ライターとしてウェブなどで仕事中。近著『立ち食いそば大図鑑』(スタンダーズプレス)、FBページ「https://www.facebook.com/tokyosobatdan/」
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