更新日:
2022年09月21日
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肉の旨味をシンプルに力強く味わう、駒沢『IL GIOTTO』のサルシッチャ
駒沢の住宅街にある一軒家レストラン『IL GiOTTO(イルジョット)』の名物は炭火で焼く熟成肉。料理からインテリアまでこだわり満載の空間を作り上げたオーナーシェフの高橋直史さんに、愛用する道具の話を伺いました。……一流の料理人が自ら愛用する3つの道具へのこだわりを語り、料理への哲学を詳らかにする連載『料理のプロの三種の神器』です。(全3話・後編/2020年2月29日公開)
- Sainowaki
駒沢の住宅街にある一軒家レストラン『IL GiOTTO(イルジョット)』のスペシャリテは炭火で焼く熟成肉。ファンの多くがこの肉を味わいにちょっと不便なこの場所を訪れます。肉中心の料理からインテリアまでこだわり満載の空間を作り上げたオーナーシェフの高橋直史さんに、愛用する道具の話を伺いました。(全3話・後編/2020年2月29日公開)
『IL GiOTTO』の方向性を変えた、精肉店「サカエヤ」との出会い
 
自身のお店『IL GiOTTO』をオープンさせてからしばらくは、魚をメインとしたメニューに力を入れていた高橋さん。
だが、ここ10年ほどは、熟成肉の料理に力を注いできた。それは滋賀県草津市にある精肉店「サカエヤ」の店主・新保吉伸さんとの出会いがあったからだ。
「お客さまのホームパーティにお邪魔したときに新保さんもいらしてたんです。熟成肉を持参されていて、それを僕が料理させてもらいました。フライパンでさっと焼いた感じを気に入ってくださり、そこからお付き合いがはじまりました」
その3年後に肉を注文するようになって、それから10年。現在の『IL GiOTTO』は「サカエヤ」の肉なしでは語れない。
新保さんの熟成肉をはじめて見たとき、高橋さんの率直な感想は「え、これ食べられるの?」 だった。肉にはカビが付いて変色して……。しかし食べてみて、その味に驚いた。
「普通のソーセージとカビ付きサラミくらい味に差がありました。肉自体の味にコクや深みがあって。魚を中心にやってきて、肉のことを知らなかったんだなと痛感しました。それからは肉への探究心が湧いてきて、いろいろ試すようになりました」
だが、ここ10年ほどは、熟成肉の料理に力を注いできた。それは滋賀県草津市にある精肉店「サカエヤ」の店主・新保吉伸さんとの出会いがあったからだ。
「お客さまのホームパーティにお邪魔したときに新保さんもいらしてたんです。熟成肉を持参されていて、それを僕が料理させてもらいました。フライパンでさっと焼いた感じを気に入ってくださり、そこからお付き合いがはじまりました」
その3年後に肉を注文するようになって、それから10年。現在の『IL GiOTTO』は「サカエヤ」の肉なしでは語れない。
新保さんの熟成肉をはじめて見たとき、高橋さんの率直な感想は「え、これ食べられるの?」 だった。肉にはカビが付いて変色して……。しかし食べてみて、その味に驚いた。
「普通のソーセージとカビ付きサラミくらい味に差がありました。肉自体の味にコクや深みがあって。魚を中心にやってきて、肉のことを知らなかったんだなと痛感しました。それからは肉への探究心が湧いてきて、いろいろ試すようになりました」
ひと皿でメインを張れるほど力強い『IL GiOTTO』のサルシッチャ
 
▲「愛農ナチュラルポークのサルシッチャ」1,800円(税抜)
さて。次なる料理はサルシッチャ(ソーセージ)。
高校生が手塩にかけて育てた愛農ポークを使ったサルシッチャは、肉そのもののような食べ応えを楽しめる。
サルシッチャでありながら、しっかりとメインを張れるようなたくましいひと皿。
本場イタリアンを彷彿させる、塩味が利いたワインを誘う味だ。
「日本の料理で塩味というと、塩以外に醤油を使ったりしますが、西洋料理は塩のみ。だから塩の使い方は大事です。イタリア人シェフが作る料理は、味がバシッと決まってます。味がボケないように、自分なりの“塩梅”を知っているんです」
高校生が手塩にかけて育てた愛農ポークを使ったサルシッチャは、肉そのもののような食べ応えを楽しめる。
サルシッチャでありながら、しっかりとメインを張れるようなたくましいひと皿。
本場イタリアンを彷彿させる、塩味が利いたワインを誘う味だ。
「日本の料理で塩味というと、塩以外に醤油を使ったりしますが、西洋料理は塩のみ。だから塩の使い方は大事です。イタリア人シェフが作る料理は、味がバシッと決まってます。味がボケないように、自分なりの“塩梅”を知っているんです」
 
付け合わせは、イタリアの野菜・プンタレッレ。水菜のようなセロリのような?
「これはチコリの仲間です。ローマでは、アンチョビとレモンとオリーブオイルで食べるんですよ」
「これはチコリの仲間です。ローマでは、アンチョビとレモンとオリーブオイルで食べるんですよ」
 
9月になると市場に並び、3月には姿を消してしまうという季節野菜。ローマ以外ではあまり一般的ではなく、イタリア人でも知らない人が多いレアな食材。これをイタリアから空輸しているのだとか……。
強い味わいのソーセージとほんのり苦くシャキシャキとした歯ざわりのブレンタレッレ。2つの味のペアリングが楽しい。
 
このソーセージを作り出すミンサーが、高橋さんが紹介してくれる3番目の道具。
強い味わいのソーセージとほんのり苦くシャキシャキとした歯ざわりのブレンタレッレ。2つの味のペアリングが楽しい。
このソーセージを作り出すミンサーが、高橋さんが紹介してくれる3番目の道具。
「使い勝手より、見た目優先です(笑)」
 
重量感あふれるボディに磨き込まれた鋳造アルミの地肌ができるヤツ! という感じ。
「構造はいたって簡単なんです。切る部分、ミンサーヘッドの中身、見てみます?」
分解して見せてくれたのは、小さな穴が空いた円盤状のカットプレート、手裏剣のようなカッター、ドリルのようなスクリューロール。重要なパーツはどれもステンレス製で信頼感も抜群だ。
各部どこもピカピカに磨き上げられ、「道具をかわいがっているんだなぁ」ということが伝わってくる。
「構造はいたって簡単なんです。切る部分、ミンサーヘッドの中身、見てみます?」
分解して見せてくれたのは、小さな穴が空いた円盤状のカットプレート、手裏剣のようなカッター、ドリルのようなスクリューロール。重要なパーツはどれもステンレス製で信頼感も抜群だ。
各部どこもピカピカに磨き上げられ、「道具をかわいがっているんだなぁ」ということが伝わってくる。
 
「使い勝手より、形とか見た目とか、そっち優先です(笑)。これは手頃なミンサーを探しているときにネットオークションで見つけて一目惚れ。張り切って入札して見事落札しました。入札したの僕ひとりだったんですけど(笑)、僕としてはガッツポーズです」
届いてみると、変圧器までオマケとして付いてきた。200Vの海外仕様のミンサーなのだ。ただでさえ重そうなのに、運ぶの大変そう。
「まぁ、簡単ですよ。コツがいりますけど」と、高橋さんは重たげなミンサーを肘に引っかけてひょいと持ち上げた。赤ん坊ほどの重さだそうだ。
届いてみると、変圧器までオマケとして付いてきた。200Vの海外仕様のミンサーなのだ。ただでさえ重そうなのに、運ぶの大変そう。
「まぁ、簡単ですよ。コツがいりますけど」と、高橋さんは重たげなミンサーを肘に引っかけてひょいと持ち上げた。赤ん坊ほどの重さだそうだ。
 
素材を生かしてシンプルに
最後に『IL GiOTTO』ビギナーのために、料理の楽しみ方を伺った。やっぱりおまかせでコースを仕立ててもらうのがいいのだろうか。
「いえ、まずはアラカルトのメニューから興味があるもの、食べてみたいものを選んで頂きたいですね。それが何度か続けば、お客さまの好みや、お酒を召し上がる方なのか、などがわかってくるので、そうなったら『今日はこんな料理ができますよ』とか、提案ができるようになります。そんなやりとりも楽しみですよね」
そういえば、高橋さんはこんなことも言っていた。
「料理を志した頃はフランス料理を学んでいました。でも、味を重ねてソースを作るフレンチよりも、素材を生かしてシンプルに料理するほうが自分に合っていると思い、イタリアンに進みました」
高橋さんも、高橋さんの生み出す料理も、疾走感があり、明快にして深い。
(全3話・了)
「いえ、まずはアラカルトのメニューから興味があるもの、食べてみたいものを選んで頂きたいですね。それが何度か続けば、お客さまの好みや、お酒を召し上がる方なのか、などがわかってくるので、そうなったら『今日はこんな料理ができますよ』とか、提案ができるようになります。そんなやりとりも楽しみですよね」
そういえば、高橋さんはこんなことも言っていた。
「料理を志した頃はフランス料理を学んでいました。でも、味を重ねてソースを作るフレンチよりも、素材を生かしてシンプルに料理するほうが自分に合っていると思い、イタリアンに進みました」
高橋さんも、高橋さんの生み出す料理も、疾走感があり、明快にして深い。
(全3話・了)
 
高橋直史(たかはしなおふみ)
広尾『イル ブッテロ』で7年間修行したのち、渡伊。ボローニャの『ラ ヴォーリアマッタ』で骨太なトスカーナ料理を学ぶ。帰国後、30歳で独立し、2002年に『IL GiOTTO』を世田谷区駒沢に開店。2011年に道を挟んだ現在地に移転。生産者を訪問するなど、素材選びを大切にしている。シンプルながらエッジを利かせた料理で、炭火をあやつる肉焼きの名手として定評あり。
広尾『イル ブッテロ』で7年間修行したのち、渡伊。ボローニャの『ラ ヴォーリアマッタ』で骨太なトスカーナ料理を学ぶ。帰国後、30歳で独立し、2002年に『IL GiOTTO』を世田谷区駒沢に開店。2011年に道を挟んだ現在地に移転。生産者を訪問するなど、素材選びを大切にしている。シンプルながらエッジを利かせた料理で、炭火をあやつる肉焼きの名手として定評あり。
 
(写真=松園多聞 Matsuzono Tamon)
駒沢『IL GiOTTO(イルジョット)』
世田谷・駒沢通り沿いにあるイタリア料理店。少し奥まった入り口は、隠れ家的な雰囲気を醸し出す。滋賀の名精肉店『サカエヤ』からの熟成肉を使った料理が評判。アラカルトから食べたいメニューを組み合わせ、好みのコースに仕立てられるのが楽しい。店内はシンプルであたたかみがあり、リラックスしながら食事を楽しめる。火曜定休。
世田谷・駒沢通り沿いにあるイタリア料理店。少し奥まった入り口は、隠れ家的な雰囲気を醸し出す。滋賀の名精肉店『サカエヤ』からの熟成肉を使った料理が評判。アラカルトから食べたいメニューを組み合わせ、好みのコースに仕立てられるのが楽しい。店内はシンプルであたたかみがあり、リラックスしながら食事を楽しめる。火曜定休。
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